地方分権推進委員会第3次勧告に関する抗議声明

2009年11月21日

内閣総理大臣 鳩山 由紀夫 殿
文部科学大臣 川端 達夫 殿
総務大臣 原口 一博 殿
内閣府地方分権改革推進委員会 委員長 丹羽 宇一郎 殿
全国知事会 会長 麻生 渡 殿
全国都道府県議会議長会 会長 金子 万寿夫 殿
全国市長会 会長 森 民夫 殿
全国町村会 会長 山本 文男 殿

 

地方分権改革推進委員会第3次勧告における博物館法の見直しに対する反対声明

日本民俗学会会長
篠原 徹

 平成21年10月7日付けで内閣府の地方分権改革推進委員会から提出された第3次勧告において、博物館法第12条および第21条について、廃止または条例への委任が勧告されているが、この勧告は現在の博物館法の改正の考え方および現在も継続している望ましい博物館の在り方の検討の方向性とは整合しないものであり、拙速な決定は問題を残すものであると考える。それ以上に、日本の博物館は資料を充実し、人的な組織や施設を整える基盤を失うことになり、危機に瀕するおそれがある。

 登録博物館制度は、博物館を設置し、その活動を維持する上で必要な資料・組織・施設という博物館の構成が、一定の水準以上にあることを公的に認知されるための制度である。勧告では博物館法12条では、登録要件の審査基準について、年間開館日数を除いて条文(第1号乃至第3号)の廃止、条例への委任が示されている。

 そこで、登録要件そのものがなし崩し的に空洞化・形骸化し、無意味なものになる恐れを抱かざるを得ない。この改正によって、都道府県毎に基準や判断にばらつきが生ずることになる可能性が高く、結果として博物館の質に地域的な不均等が生ずることが危惧される。こうした事態は、国の政策として芸術や文化の振興と生涯学習の拡充を掲げる一方で、その一翼を担う博物館について、現行法およびその運用、関連する行政通達等で維持されてきた、博物館の質の担保を目的とする登録博物館制度の基礎を、危うくすることになりかねない。

 今回の勧告は、博物館法に関するものについて、上記のような問題があると考え、わが国の博物館を国際的なレベルに育てることを主導できる博物館の基盤を危うくする可能性をはらむ改正には賛成できないことを、声明する。